『で、なにがあったの?』



ぶっきらぼうだけど、その声のトーンは優しい。その声に安心して、今日のことを由良ちゃんに話す。



砂川くんが、女の子に呼び出されたこと。
たぶん、告白だろうということ。

好きだって言えなかったこと。



起きたことと、自分の気持ちと……順序がぐしゃぐしゃになってしまったかもしれないけれど、全部、言葉にする。




『……んー、それはひよが落ち込む理由にならない気がする』

「どういうこと?」



私の話を全部聞いたあとで、由良ちゃんが真剣な声でそう言ったけれど、その意味がよくわからなくて。



『だって、ひよは砂川にまだ何も伝えてないんだよ。それは、その子に砂川を奪われたって何も言えないし、落ち込む資格もなくない?』



「……」




たしかに、そうだ。

由良ちゃんが口にしたのは紛れもない正論。





『もう、この際言うけどね』


「うん」


『いつまでも逃げてちゃだめなんだよ。見てるだけでいいっていうなら、それでもいいけど。それだけじゃ嫌なんだったら、ちゃんと言葉にしないと』



「……」


『言わなきゃ、伝わらないよ。ひよが砂川くんにどんな気持ちを抱いていて、どうしたいか、言わないと。今のままじゃ、なにも変わらないよ。今が素直になりどきじゃない?』