それから暫くして。



「落ち着いたか?」

「……うん、ごめんね」

「ひよりが謝るなんて100年早い」



おどけたように余裕たっぷりの表情を見せた恭ちゃんに、自然と笑顔になって、座っていたベンチから立ち上がった。



そして、ふたりならんで歩く帰路。




───あのあと、いつまで経っても泣き止む気配のなかった私を、恭ちゃんが公園まで連れてきてくれて。


私を公園のベンチに座らせたかと思えば、自販機でジュースを買ってきてくれたんだ。



私の好きなりんごジュース。


それをちびちび飲みながら気が済むまで涙を流したことで、ようやく心が落ち着いてきた。




「楽しい話でもしねえ?」



歩きながら、恭ちゃんが言う。



「そうだね」



頷いて、それから。



「あっ、そういえば」

「ん?」

「今日ね、友達が増えたよ。女の子の」




恭ちゃんにも報告したいと思っていたのに、いろんなことが起こったことで忘れてしまっていた。


由良ちゃんの姿を思い浮かべながら言うと、恭ちゃんは驚いたように……でもとびきり嬉しそうに微笑んでくれた。




「よかったじゃん」

「うん、幸せ」



幸せだと言った私に、恭ちゃんまで幸せそうに頬を緩めた。


嬉しかった。
幸せの端っこを捕まえた気がしたの。



……そのきっかけをくれた砂川くんにお礼を言うことさえ、私はもうかなわないのかな。