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「ほんっと無駄に足だけ速いのなんとかしろよ」



昇降口を飛び出して、少ししたところにある踏切の前で恭ちゃんにぐっと腕を掴まれた。




「きょう、ちゃん……」

「は……?ちょ、おまえ、泣いて────」




振り向いた私の両頬に止まることも知らず流れる涙を見て、恭ちゃんが息を呑んだ。


そんな恭ちゃんの様子を見ていると安心したのか、ますます涙が止まらなくなって。


どうすればいいかわからなくなって、恭ちゃんの胸にしがみついた。




「ふぅ……ぇっ……」



しゃくり上げる私の背中に恭ちゃんの腕が、優しく回る。とんとん、と規則的なリズムであやすように叩いてくれて。



「鼻水はつけんなよ」




ふわりと私を包み込んだ恭ちゃんの匂いと
それ以上は何も言わなかった優しさに、ほっとして心が温まった気がした。