「え……? でも、そんな、いきなり」

「いいから、由良って呼んで!こっちも、ひよって呼ぶから」




ご、強引だ。

しかも、“ひよ” と呼ばれ慣れないニックネームを突然与えられる。

有無を言わせない勢いの榎木さんに面食らいながらも、従うことにした。




「由良……ちゃん?」



いきなり呼び捨てはハードルが高くて、なんとかそう呼ぶと、榎木さんは少し表情を和らげたように見えた。




「ひよに謝っておきたいことがあるの」

「私に……?」



そう、と榎木さんは頷いて。

私の瞳を真っ直ぐに見据えた。



「いろいろ、意地悪してごめん」

「……っ?」




いじ……わる? 何のことかぴんとこなくて、きょとんとすると。



「仕事押し付けたり、掃除任せっきりにしたり、あれ全部わざとだった」


「……」




思わず黙り込んだけれど、榎木さんは怯まずに言葉を続けた。



「正直言うとね、私はひよみたいな子が一番苦手だった」




苦手っていうより、むしろ嫌い、かもね。


自嘲ぎみに笑った榎木さんが少し目を伏せる。