好きになる条件に当てはまったから、じゃなくて、全部 “砂川くんだったから” 好きになったんだ。



くしゃっとした笑顔も、そのときにできる目の横の皺も、短くてさらさらした黒髪も。

『桜庭さん』って呼ぶその声も、繋いだ手の感触も、触れた体温も、もう全部。



砂川くんの全部が、好きで。

大好きで、堪らなくて。



溢れんばかりの恋情は、もう、どうしようもないの。

行き場のない想いは、涙になって目の縁に滲んだ。



背を向けた砂川くん、その後ろ姿を捕まえて。

私がこんなにも、砂川くんのことを想ってるって伝えられていたら、今なにか、変わっていたのだろうか。


今更、もうその答え合わせはできそうになかった。