「遅いじゃん、心配した」



私の姿を瞳に捉えて、ほっとしたように微笑んだのは恭ちゃんで。



「恭ちゃん……!」



その名前を呼んで、そのまま駆け寄ろうとする。

それが、恭ちゃんと私のいつも通りだったから。





だけど、今日はそうはいかなかった。




「っ?」



駆け出そうとした私の右腕を、誰かがぐっと掴んでその場に引き留めたから。


誰か、じゃなくて─────そんなの、この場には砂川くんしかいない。


驚いて振り向くと、砂川くんの真剣な瞳が真っ直ぐこちらを向いていた。



「砂川、くん?」



かろうじて名前を呼ぶと、砂川くんの瞳がぐらりと危うく揺れたような気がした。


いつもとどこか違う砂川くんの様子に、私は黙っていることしかできなくて。


永遠のように感じた一瞬の沈黙ののち、砂川くんがゆっくりと口を開いた。



「なあ」

「……っ」



ぐっ、と体を引き寄せられて。

切なげに歪んだ瞳が追い詰めるように迫ってくる。




「深見先輩と桜庭さんって、何なわけ?」

「え……っ?」



感情を押し殺したような苦しげな声で、告げられた言葉に私の頭の中ははてなでいっぱいになる。


何って、そんなの。



私と恭ちゃんは従兄妹だよ。
普通の従兄妹に比べると、仲は良いかもしれない。でも。