あたりまえのように、私の家の前まで送ってくれた砂川くん。
じゃあ、と言いかけて立ち去ろうとした砂川くんがふと足をとめて。
「次は、夏休み明けだな」
「うん、残りの課題がんばるね……!」
図書室でわからない問題を教え合いながら、課題を進めていたんだけど、提出の分を終わらせるには、まだあと少し残っている。
でも、苦手な範囲は詳しく解説してもらえたし、わからない問題があれば連絡してって言ってもらえたし、とっても心強い。
「じゃあ」
「うん、またね」
今度こそ背中を向けた砂川くんに手を振って、その後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
『素直になれなくて、ごめんね』
それは、ほんとうは、私が言うべき台詞だ。
『次は、夏休み明けだな』
本当は、夏休みが明ける前に、もう一回砂川くんに会えたらなって思ったの。
夏休みが明けるまで会えないなんて、寂しいの。
“会いたい” だとか、“好き” だとか、ごまかすための言葉の後ろに隠した素直な気持ちを、いつだって私は伝えられずに終わってしまう。
でも、このままこの時間が続くなら、何も変わらずに砂川くんとの時間が続くのなら、このままでもいいのかもしれない。
このままで、いいのかな。
ねえ、ほんとうに。
このままでもいいと、私はそう思っているの……?
◇