「だけど、なんか、他の奴らも見てると思うと癪で」




ぼそり、と呟いた声はよく聞き取れなくて。

でも、砂川くんが少し頬を染めているように見えたから、きっと悪いことを言っているわけではないと思う。



ほっとして、胸を撫でおろしていると。




「髪上げてると、うなじがちらちら見えるし」

「簡単に触られてるし」





砂川くんは不服そうに呟いて。

かと思えば。





「冷静になれなくてごめん」





軽く眉根を寄せて、砂川くんが私の目を見つめる。

心臓の音が一際うるさくなった。




「素直になれなくて、ごめん」




ぽつりと呟いた砂川くんに、首を横に振った。


どうして謝るの。

今、砂川くん、私が喜ぶことしか言っていないのに。いつも、砂川くんには幸せをもらってばかりなのに。


だけど、それを言葉にはできなくて、ただ首を振ることしかできなかった。



ふるふると首を振る私を見て砂川くんは、ふは、と柔らかく微笑む。

私の好きな、笑顔。




砂川のその表情を見ていると私まで笑顔になるんだよ。まるで、魔法にかけられたみたいだ。