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帰り道、久しぶりにふたりで並んで歩く通学路。

ふたつ並んだ影は、しばらく見ていないだけで初めてのときみたいに新鮮に見えた。




「……あのさ」



砂川くんが沈黙をやぶる。

その声に顔をあげると、思いのほか砂川くんは真剣な顔をしていて。




「それ、似合ってるよ」



不自然に目を逸らしながら、砂川くんが言った。

“それ”って、何のことだろう。



きょとんとする私に、砂川くんが口を開く。




「ポニーテール」



砂川くんの視界の端で揺れる私のポニーテール。


息を呑んだ。だって、さっきは『いつもの桜庭さんのほうがいい』って。


だから、落ち込んだのに。


困惑した表情を向けると、砂川くんは緩く口角を上げて。




「ほんとは、最初見たときからかわいいって思ってた」


「え……っ」




聞き流しそうになるほど、さらっと告げられた “かわいい” の言葉に体が硬直した。

他の誰の言葉よりもいちばん、心に真っ直ぐにくる。


砂川くんに “かわいい” と言われるのがいちばん嬉しい。


この数週間の間、ぽっかり穴が空いたようだった心が満たされていくような気がした。