「あっ、ごめ……」



転がり落ちた消しゴムを拾おうと、席を立って、しゃがみ込む。


腕を伸ばせば届きそうなぎりぎりの距離にある消しゴムに手を伸ばすと。




「っ!」




こつん、と額がなにかにぶつかった。

じわりと広がる痛みに、額を擦りながらぱっと顔をあげると、そこには同じように額を擦る砂川くん。



どうやら、二人同時に消しゴムを拾おうとして額同士をぶつけてしまったらしい。




「ごめんなさい……」

「いや、俺の方こそ」





反射的に謝ると砂川くんがぱっと顔をあげた。


そういえば、砂川くんとここで初めて出会った日も、入口のところでこんな風にぶつかったんだっけ。

懐かしいな。




あの日から、その距離は少しは変わったのだろうか。


やっと近づけたと思ったら、あっさり離れていってしまうから実際のところがどうなのかなんて、私には皆目見当もつかない。


絡んだ視線に、近いようで遠い不自然な距離感。


どちらかが少しでも動けば簡単に触れてしまえるような距離に既視感をおぼえるけれど、私たちの距離感はいつからこうなんだろう。


私と砂川くんのこの微妙な距離につけられるような名前なんてあるのだろうか。