恭ちゃんが私の髪を弄ぶのは、いつものことだからもう慣れた。
されるがままになっていると、恭ちゃんがふと首を傾げる。
「ポニーテール、初めて見たかも」
「そうかな。実はね────」
今日ポニーテールをしてきたのには、ちょっとした経緯があるんだ。
小春の髪は、毎朝私がアレンジしているんだけど……。
『今日はねっ、ポニーテールにしてほしいの!』
いつものように、小春のリクエストを聞きながら、その柔らかい髪を梳いていると。
『ねえ、今日はねーたんも小春とおそろいにしよ?』
と、小春が提案してきて。
可愛らしく小首を傾げて、そんなことを言われたら断れるわけがない。
小春のポニーテールに、うさぎをかたどったビーズのついたゴムを結んでから、自分の髪をポニーテールに纏めた。
久しぶりに髪を上げたけれど、思った以上に首周りが涼しくて、夏はこれもいいかも……なんて思った。
「いいじゃん、似合ってると思うけど」
小春との会話の内容を恭ちゃんに手短に説明すると、そんな返事が返ってきた。
「ほんと?」
なんで疑うんだよ、と笑った恭ちゃん。
だって、恭ちゃんはいつも意地悪しか言わないから。
手放しに褒められると、なんだかくすぐったい気持ちになって恭ちゃんを見上げながら、えへへ、と照れ笑いを浮かべていると。
「───桜庭さん、こっち」