だけど、さっきから私の頭を悩ませ続けている件についてはいっさい触れてこない。



……こんなに意識しているのは、私の方だけなのかな。



思えば、あのあとの帰り道も砂川くんはいつも通りに見えた。

ぎこちなかったのは私だけで、砂川くんはいたって涼しい顔をしていたような気がする。




砂川くんの中では、もう何事もなかったことになっているのかもしれない。


簡単に消してしまえるのかもしれない。


最早初めから、あんなのノーカウントだったのかも。


あれこれ想像して、そのどれもに、きゅう、と胸の奥が締め付けられるような心地がした。




────私は忘れようと思ってもきっと、いつまでも忘れられないのに。消えない記憶として、いつまでも残ってしまうのに。




それがなんとなく悔しくて、寂しくて、そんな気持ちをごまかすようにベッドに潜り込んだ。

指先を動かして、砂川くんへの返信を送信する。




[こちらこそ、ありがとう!]




にっこりと笑っている絵文字を添えて。





その満ちたりた笑顔の絵文字とはうらはらに、私は。


重ね合わせたその余熱が砂川くんの方にも、ほんの少しでもいいから残っていますようにと願わずにはいられなかった。