素直になれない、金曜日


「や、面白くて笑ってるとかじゃなくて、桜庭さんっていつもはそんな感じじゃないからさ。突然やたら饒舌になるからびっくりしたっていうか」



くくっ、と噛み殺したように笑いながら砂川くんが言う。




「変だった……?」



いつもと違う、といわれてまず気になったのはそこだった。

不安になって尋ねると。




「全然。つうか、むしろ可愛……────」




はた、と我に返ったように口を噤む。


いったい何を言いかけたんだろう、と疑問に思ったのも束の間、砂川くんはもう一度口を開いて言葉を紡ぎ直した。




「……桜庭さんのそういう一面が知れて、よかった」




それを言うなら、私だって同じで。

砂川くんのここまで屈託のない笑顔なんて知らなかった。知れてよかった、嬉しい、と思う。



ずるいなあ、こうやって砂川くんは少しずつ、でも確実に私の心を侵食していくんだ。




「桜庭さんがあれほど熱弁するの聞いてたら、可愛く見えてきた」




くまのぬいぐるみの頭を撫でながら、砂川くんがそんなことを言う。



「ほんと?」

「ん。このキーホルダーとか、結構本気で欲しくなってきたかも」



キーホルダーを手に取って、真剣な顔をして悩み始めた。