素直になれない、金曜日



「俺は今、桜庭さんとだけ、 一緒にいるつもりなんだけど」



息を呑む。

砂川くんの台詞を頭の中で反芻して、それから頷いた。



「……うん」



そうだった。

今、誰よりもきみの傍にいるのは他の誰でもなく私で。

それなのに私ときたら、周囲ばかりを気にして、砂川くんのことが全然見えていなかった。



胸を張って砂川くんの隣に居たいと思うなら、まずは砂川くんとちゃんと向き合わなきゃいけないはずなのに。



そうだ。

今わたしの一番そばにいるのは、榎木さんたちじゃなくて。




「……私が今、一緒にいるのも砂川くん、たったひとりだよ」


「うん」




頷いて、微笑んだ砂川くんが歩き始めて、私はその背中を追いかける。

今度はちゃんと、足も動く。




そのまま、榎木さんたちの目の前を横切った。

その間は僅か数秒なのに、とても長く感じる。



榎木さんたちの視線が、こちらに集まっているのを肌で感じた。きっと、彼女たちは砂川くんと私に気がついている。




本当は隠れてしまいたいし、耳だって塞いで、榎木さんたちの声をシャットアウトしてしまいたい。




だけど、不思議ともう怖くはなかった。

それはきっと、誰よりも近くに砂川くんがいてくれるから。