素直になれない、金曜日




「ありがとう」


シンプルに感謝の気持ちを伝えると、どういたしまして、と返ってきた。



「次は向こうのお店に入る?」



予算はまだ十分に残っているし、せっかく電車に乗ってまで来たのだから、今日は端から端まで見て帰るつもりだ。


砂川くんが頷いたのを確認して、今いる店から出た。




そして、次に向かうお店へと足を進めていると────





「あははっ、ほんと由良ってば最高なんだけど!」


「いやー、ほんとにうちらって気が合うよね〜っ」




すぐ近くで聞き覚えのある声がした。

きゃはは、と明るい声で楽しそうに笑うその声の持ち主は。




「……っ」




ちら、と横目を向けると、やっぱり彼女たちだった。


榎木さんたち数人の女の子のグループ。
学年でも一際華やかな顔ぶれ。



思わず足が竦んで、ぴたりとその場に縫い止められたように動かなくなった。


このまま此処にいれば、すぐにでも榎木さんたちに見つかってしまうだろう。



私は上手く隠れられるかもしれないけれど、圧倒的な存在感がある砂川くんに、それは無理な話で。




そうすれば、横にいる私に気づいて、それで。