図書室でふたりでいるときより、幾分も近く感じて息が上手くできなかった。
だから、電車の中でも買い物のときも自然と砂川くんから一定距離を保ってしまっていたのだろう。
意識しすぎなのは、わかっているけれど。
頬が熱くなっているのを自覚しながらも、顔を上げて砂川くんと目を合わせる。
すると、砂川くんが突然ごほっ、と咳払いをして。
「……だからって」
「……?」
「あんまよそよそしくならないで」
なにか気に触ることしたかなって、不安になる。
そう言った砂川くん。
「どんな桜庭さんでもいいよ。別に、それで嫌になったりなんかしないし、だから、そんな離れないで」
とくん、と心臓が音を立てた。
砂川くんによく思われたくて、少し背伸びしてみたつもりだったけれど。
背伸びをして、砂川くんに合わせようとしなくったっていいのかな。
「それに、俺もしてるよ」
「……へ?」
「緊張」
困ったように笑う砂川くんの、耳が紅く染まって見えて、息を呑んだ。
「……でも、せっかく休日なんだから、細かいことはあんま気にせずに楽しも」
「ぜ、善処します」
今はこの砂川くんといる時間を楽しめるように。
「うん、よろしく」
私が無意識にこわばっていた表情を緩めると、砂川くんもほっとしたように柔らかい笑顔を浮かべた。
そして。
「桜庭さんもこれ食べる?」
「えっ、いいの?」
反射的に答えると、砂川くんが切り分けたホットケーキをフォークに刺して私の口元まで運んでくれた。
「はい」
抗う術もなくそれを口に含んだところで、ふと気づく。
これって所謂、あーん、されてるっ?
しかも、間接────……っ。
「おいし?」
「……っ!」
頭の中でいろいろ考えては、頬を真っ赤に染めている私とは対照的に涼しい顔をして首を傾げる砂川くん。
そんな彼に、頭の中で考えていることを悟られないようにこくこくと頷いた。
ようやく砂川くんとの間に流れる空気がいつも通りに近づいてきた。
いや、いつもより、ほんの少し。
「ほんのり甘い、ね」
ホットケーキの感想をそっと呟くと、顔に似合わず甘いものが好物の彼はふ、と笑った。
まだ土曜日は始まったばかり。



