スプーンとお皿が当たる音だとか、食べ方が汚くないかだとか、食べるスピードとか、一口が大きすぎないかとか……そんなことばかり気になる。
緊張しすぎて、体が強ばってしまって、萎縮しながらちまちまとオムレツを口に運んでいると。
「桜庭さん」
「っ!」
意識していたところに急に名前を呼ばれて、肩が過剰にびく、と反応する。
思わずスプーンを取り落としそうになってしまった。
「……あのさ、なんで、そんなにがちがちなの」
「……っ」
「俺、なんかした?」
砂川くんの問いに慌てて、首を横にぶんぶんと振った。
「ちが……っ」
「……?」
「違くて、その」
なんでこんなことを言う羽目になってるんだろう、と思いつつ砂川くんの誤解は解きたくて。
だって、砂川くんのせいじゃない。
これは、ただ。
「ただ、緊張してるだけ、なの」
「緊張?」
「うん……こうやって男の子と出掛けるのなんてはじめてだし、気を緩めると、変なことしちゃうんじゃないかって」
いつもより、砂川くんとの距離が近い気がして。
買い物しているときから……ううん、電車の中にいるときから、思っていたけれど。
今日の砂川くんは、常に手を伸ばせば届くところにいる。
その距離は、ずっと半径0.5メートル以内。



