誰も名乗り出ない状況の中、委員長先輩は困ったように苦笑している。


そういう委員長先輩も勿論三年生、受験生。

委員長としての責任があるからといって、週末の貴重な時間を委員会の買い出しに差し出すのは本望ではないだろう。



────となると、無難なのは帰宅部の一年生か二年生。


……そう、私、みたいな。




『……』



今週末は、何の予定も入っていない。
部活にも所属していない。


そうだった、私なら……丁度都合がいいんだ。



ぎゅ、と背中の後ろで左手を右手で握った。



駄目だ、本当に。

視線を感じるとどうしても萎縮してしまうし、目立つのは苦手。




大勢いる中で声をあげるのも苦手、だった。



……でも。

スケジュール帳に挟んだままの、“お守り” の存在を頭のなかで思い浮かべて。


左手を掴む右手に少し力を込める。

そして小さく、息を吸った。



『桜庭さん……?』



おずおずと、手を挙げた私に委員長先輩が首を傾げた。



『あの』




視線が集まるのを肌で感じる。

掠れそうになる声を、なんとか保って。





『……私が、行きます』