「……変われる」



小さく呟いた。

お守りにしよう、そう思ってその栞をそっとスケジュール帳に忍ばせる。



逃げたくなったとき、弱気になったとき
後ろ向きに走り出したくなったとき



これがあれば、頑張れるかもしれない。

気休めでもなんでもなく、そう思ったんだ。



無防備に寝顔を晒す砂川くんの姿をちら、と横目に覗いているとふと思い出した。




『なんか、見てて心配になる』




いつだったか、砂川くんが私にふと零した言葉。



砂川くんにとって、私って。
きみにとって “桜庭ひより” って、一体どんな存在なんだろうか。


きみの目にうつる世界のなかに、私はどんな姿で居るんだろうか。



誕生日を覚えていてくれたり、ジャージをかけてくれたり、いつも優しくしてくれるのは。

いつも背中を押してくれるのは、私がどことなく葵依ちゃんに似ているから? 心配だから?


砂川くんにとって私は、妹みたいな存在……?



そう考えれば考えるほど、しっくりくるけれど。

うらはらに、心がちくりと針でつつかれるような、そんな。




こんなことで傷つくような資格、ないのに。



それでも私は思ってしまっているのだろう。

砂川くんの “妹” なんかじゃ嫌で、彼の前では “一人の女の子” でありたいと。