図星を指されて、うっ、と言葉に詰まる。

だってその通りで、その節は助けてもらったわけで。



「心配、なだけ」



砂川くんがそこまで言ってくれるなら、と気持ちがぐらりと傾いた。



「ほ、ほんとにいいの?迷惑じゃない?」

「迷惑だったら自ら提案してないから」

「じゃあ……お、お願いします」



そう言ってぺこりとお辞儀すると、砂川くんは満足げに口角をあげた。



「よかった」



そんな彼はどことなく嬉しそうで。



「じゃあ、また明日」

「うん、また明日」




手を振ると、砂川くんは背中を向ける。

私は砂川くんの後ろ姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。



砂川くんが見えなくなって、ふと視線を空に向けると、ちょうど夕焼け空。



まだ残る薄水色の空の西の端は、オレンジ色よりも茜色に近く染まっていて。

その茜色は透き通って、どこまでも遠く見える。


こんなに澄んだ、まるで透明に色をつけたような夕焼けを見たのははじめてだった。





まるで砂川くんみたいだ。

砂川くんが口にする言葉のひとつひとつは、まっすぐで真摯で透き通った透明色。



水のように身体の隅々まで染み渡っていく。
そして、心地よく潤っていくの。




『少なくとも、友達だって思ってたから。俺は』

『桜庭さんが俺にとって特別なだけ』

『明日からも、一緒に帰ろ』




砂川くんがくれた言葉。
話してくれたこと。

全部まるごと私にとっても特別で、大切で。


だから、まだまだもっと、って欲張りになってしまう。




『じゃあ、また明日』



明日が早く来てほしい、と思ったのは
今までの人生で初めてのことだった。