素直になれない、金曜日




近づくと、小春がたっと駆け出して私の腕の中に飛び込んできた。



「ねーたんっ!ただいまー!」


「おかえり。遅くなってごめんね」


「んーん、いいよ!あおいちゃんとお話してたから楽しかったもん!」





にこにこと私を見上げる小春に首を傾げた。




あおいちゃん……?

初めて聞く名前。新しくできた友達だろうか。





もしかして、さっきまで小春の隣にいたあの女の子のこと?


ふと思い当たって、まだ保育士さんの隣にいる女の子に目を向けると。





「……!おにいっ」





突然その女の子も勢いよく駆け出して、私たちには目もくれずに通り過ぎていったかと思えば。






「おかえり葵依(あおい)。今日もいい子にしてた?」


「うん、いい子にしてた……」


「そっか、偉いな」




目の前で繰り広げられるやりとりに驚くあまり、私は目を丸くした。


ちょうどそのタイミングで小春が声を上げる。




「あっ、この人が葵依ちゃんのおにーちゃんかっ!」




私が驚くのも当然のはず。


だってその女の子が抱きついていたのは、先ほど私の後ろをつけていた足音の持ち主で、それから私を助けてくれた男の子だったから。