先輩たちのあいだで私が恭ちゃんの従妹であるということは、周知の事実。
男女関係なく友達の多い恭ちゃんの従妹だから、こんなに気にかけてもらえているというのも十分わかっている。
「わ、わたしは大丈夫なので……」
そう言って首を振ってみせると、すかさず男の先輩が手を挙げた。
「あ、俺送ってくよ」
その声を皮切りに、立て続けに数人の男の先輩が身を乗り出す。
「え、おま、先駆けはずりぃよ」
「いや、俺が送ってくって!」
私はというと、手を挙げる先輩たちの様子に目を白黒とさせていた。
たしかに、正直言うと不審者情報を聞いたあとで一人で帰るのは心細くて。
だから送るよ、と声をかけてくれたり心配してくれる気持ちは素直にありがたいと思う。
だけど、同じ委員会だとはいえ女の先輩はともかく男の先輩となんて、ほとんど喋ったことがない。
恭ちゃんの友達なんだから、話せばきっと怖くないんだと思う。
むしろ、素敵な人たちなのだろう。
だけど、話すのが苦手な私にはハードルが高すぎる。
はじめて話す人と、ふたりきり、なんて。
純粋に、こわい。
フシンシャも怖いけれど、私にとっては同じくらいこわい。
ちゃんと話せるだろうか、何を話したらいいのだろうか─────なんて想像しただけでお腹のあたりがきりきりと痛んでくる。