頭を撫でる手に、その感触に、ふと思い出してしまった。
「……っ」
きょう、昼休みの終わり、図書室の前で。
私の頭の上に乗せられた砂川くんの手のひら。
するりと撫でられた感触。
恭ちゃんとは違って、その手はどこまでも優しかったこと。
思い出してときめきに頬を火照らせていると、そんな私の様子に恭ちゃんがいち早く気づいた。
「……顔、真っ赤だけど」
「そ、んなことないよ?」
しどろもどろになりながら誤魔化してみるけど、そんなの長年の付き合いの恭ちゃんに通用するわけがない。
「……ひよりさあ、好きな奴できたろ」
「……!」
「隠したってばればれだけど」
いつから、気づいてたの。
どうして気づいたの。
恭ちゃんの目はやっぱりごまかせない。
きっと、その相手が砂川くんだってこともお見通しなんだ。
筒抜けだった、なんて恥ずかしすぎて
穴があったら入りたい。
俯いて恥ずかしさに耐えていると、恭ちゃんは意外にも優しい声で語りかけてくれる。
絶対、意地悪く揶揄うんだと思ったのに。
なんて、失礼なことを考えたことに対して心の中で恭ちゃんに猛省した。



