その場にぼんやりと立ち尽くしていれば、恭ちゃんが私を手招きする。
「座れば?」
なんて、まるで自分の家みたいに言う。
そんな恭ちゃんの言葉に従って、ソファの恭ちゃんの隣に腰を下ろした。
「最近どうなの?」
「どうって……?」
主語がない質問に、首を傾げるしかない。
「学校とか、いろいろ?」
同じように恭ちゃんも首を傾げるから、なんだそれ、と思わず笑ってしまう。
「特に、どうもないかなあ……」
最近どう、って訊かれても。
大きな出来事なんてなかったし、あるとしても、それは代わり映えのない日常のなかのほんのひとコマだったり。
「ふーん」
自分から訊いてきたくせに興味なさげな反応を返しながら、恭ちゃんは背中の真ん中くらいまでの長さがある私の髪に手を伸ばした。
そして髪の毛を指ですーっと梳いたり、くるくると指に巻き付けてみたり。
恭ちゃんが私の髪を弄ぶのはいつものことで、もう慣れたけれど今日は敢えて聞いてみることにした。



