そのまま彼が立ち去るのを待っていたけれど、彼は立ち止まったまま動かない。
な、なんで……?
お互い少しも動かないまましばらく経って。
痺れを切らしたように、男の子が口を開いた。
「行かないの?」
「え……」
で、でも……と言いかけたけれど腕時計をちらりと見てハッとした。
どうしよう、もうこんな時間だ。
今思い出したけれど、私は保育園に小春を迎えにいく途中。
これ以上小春を待たせるわけには……。
「で、では!」
ぺこり、と頭を下げて保育園への道を急ぐ。
私が歩き始めるとすぐに、後ろで彼が歩き始める足音がした。



