「疲れました……」


活動場所に着くと、メレンダは壁にもたれかかった。
僕も息を切らせていた。


「二人とも体力ないんだねぇ」


永田は腕を組み、けろっとした様子で言った。


「違います!私、入った時点で先生に気付かれて、三人を振り切って来たんですよ!最初から体力を消耗してただけです」


メレンダが頑張って言い返す。


「永田がおかしいだけだ……」


照先はそう言いながら鍵を開ける。
ジュースやお菓子のにおいが残る、軽音楽部の活動場所だ。


「折角浜校に来たんだし、聴いていきなよ。あっ、緋梅の写真も見る?」


「見ます!」


「ちょっ、永田!勝手に見せないでよ!」


止めようとしたが、永田はファイルから写真を取りだし、メレンダに見せる。
ちよっと調子にのってた頃の痛い写真がある。あんなのを見せられたら幻滅するだろう。


「わー、かっこいい!なんか中指立ててますね。ピースも向きが違う……」


「見なくていいよ!」


「フィウメ、何慌ててるの?」


幻滅はしていないようだ。よかった……。


「皆向きが違うのって、何か意味があるんですか?」


「これはね……」


「教えなくていいよ!」


「はいはい、とにかく外国でやっちゃ駄目だよ」


永田は写真をひらつかせ、説明をやめた。
メレンダは意味がよくわかっていないらしく、首をかしげる。意味を知らなくてよかった!


「緋梅~俺はわかったぞ~」


守築が肩に腕をのせてきた。厄介なやつに気付かれた。


「永田、始めるぞ」


「はーい」


定位置に立ち、空気が変わる。
一年生の文化祭の時と同じようにワクワクしていた。