メレンダは渡り廊下の下で止まった。
そこに上靴が置かれていた。入れていた袋は、何度も踏まれたかのように黒く汚れていた。


「フィウメ?ここに何か用?」


「いや、メレンダが走っていったのが見えたから……」


メレンダに何をしたのか、大体想像がついた。さてどうしてやろうか。
小学校のときに起こした、学級裁判を思い出す。大げさと言われるかもしれないが、それくらいのことをしたのだ。


「フィウメ、明日はおすすめのお菓子持っていくから楽しみにしててね」


少し気が抜けた。
落ち着いて考えると、メレンダはそういうことを望まないかもしれない。
ちくったと言われ、逆にひどくなる可能性もある。しかし野放しにするのも……。


「寒いから早く帰りたいのだけどねー。今日は用事があるわ……」


「用事?」


「うん。岸田君に呼び出されたの。普段関わらないのに……。何の用か見当もつかない」


岸田は嘘の告白をしようとしていたやつだ。
嘘をつこうとしている、と言ってもいいけど……。


僕はメレンダを抱き寄せた。


「あいつのところには行かないで」


「えっ?」


メレンダは目をぱちくりさせた。
嘘の告白があると知ってしまったら、僕が告白するときに疑われるだろう。
ならば、僕が先に行動してしまえばいい。


僕のせいでメレンダを傷つけた。だからもっとメレンダに近づいて、守りたい。僕以上に悪いやつは近づけさせない。


「岸田君は嘘をつくかもしれないから。先に僕が問いつめるよ」


「わかった。……いつもありがとう」


離れた後も、手にはメレンダの熱が残っていた。