そして高校生になり、永田に呼ばれたから浜高に侵入した。
卒業式で、Geometric unionは浜高で活動すると言われた。文化祭等に出る際、僕は仮面で顔を隠すらしい。


入学式から二週間。初めて浜高の部室に入る。
そこには……。



「蔵王、さん……!?」


「緋梅か?永田たちはまだだからここに座れ」


入り口で立ち尽くしていると、蔵王さんに案内された。


なんで、笑って僕を迎え入れた?
どうなっているんだ!?


その後、蔵王さんと永田たちは和解したと伝えられた。あんなひどいことをして和解!?信じられなかった。


皆、あのことに一切触れなかった。蔵王さんはあの照先とも普通に話していた。


文化祭では、初のダブルギターに挑戦した。
好評だったが、僕は蔵王さんとの実力差に気付き始めた。


それでもまだ大丈夫と、逃げてしまった。
確信したときにはもう遅く、どれだけ練習しても差は開いたままだった。


テスト勉強を放棄して練習したようなものだ。成績はもちろん下がった。


それでも平均はいってるし、欠点はないのだから大丈夫、と慢心していた。


「なんだこれは!一つも上がってないじゃないか!」


お父さんが成績表をテーブルに叩き付けた。


「昇、これは流石に駄目よ。次はもっと頑張りなさい」


メンバーからも見放され、ここで頑張らなければ先生や家族からも……。


「わかったよ、次はいつも通り平均以上は取るよ」


僕にはもう成績しか残っていない。


部屋に戻り、罪悪感を沸き上がらせるピックを見つけた。
捨ててしまおうかとも思ったが、それは出来なかった。


かつて僕に力を与えてくれた手紙。大切にしまっておいた箱から全て取り出す。
箱の奥底にピックを置き、上から手紙をのせる。


思い出を封印し、もうギターは弾かないと思った。