受験生になると、部活の時間は一気に減った。
二年生になった後輩たちは、軽音楽部を残していこうと頑張ってくれている。


「照先、鈴城、お前たちはやる気を出せば良い点を取れる。なのにお前らは本番が近付いてもやらない!」


「高校の予習で忙しいんだ。それと、俺は天才だから勉強しなくてもこの成績だから問題ない。守築、中学の基礎なんかに時間を使わせるな」


「エネルギーの無駄だと思いまーす。理科、体育、音楽、保健体育は頑張るので別にいいでーす」


「基礎が出来ていないと高校の問題も解けないだろ!あと鈴城!細菌の画像ばっかり見て他が全然出来てないぞ!細菌以外も頑張れ!」


守築は大変そうだな。
守築が永田を指差し、永田だったら今頃死んでるぞ!と言った。


「ん?僕が教えているのにやらなかったら、運動場十周ね」


「俺のやり方が気に入らなければ永田に変えるぞ」


二人は永田に怯え、真剣に参考書に向き合った。


「ねぇ、緋梅は志望校どこ?」


永田に聞かれ、ギクリとした。


「あー、浜津高校……」


「皆同じとこか。緋梅なら余裕で受かるよ」


嘘だ。
僕が選んだのは浜津高ではなく浜津商業だ。
浜津高は、偏差値は普通だが倍率がとても高い。一方、浜津商業はそれほど倍率が高くない。


何か資格を取って就職しやすくしたいと思ったのもある。
まあ……蔵王さんに会いたくない、が一番の理由だ。


僕はギリギリまで浜津商業を受けることを隠した。