先生の退屈な企画の後、僕たちのライブで眠気を飛ばす。


「次はGeometric unionの発表です。どうぞ」


幕が上がり、ずらっと並ぶ生徒を見て緊張する。
手が汗ばむ。途中で滑らせたりしないだろうか?


俺らがしっかりしてるから大丈夫だ!
昨日、照先と守築が肩を組んで笑っていた。


どうせ永田の方が注目されるし、そこまで緊張しなくていいんじゃない?……練習でも良かったし、もっと自分に自信持っていいと思うけど。
鈴城はグサッとくる言葉の後、照れながら言ってくれた。


緋梅、そんなガチガチだと良い音は出ないよ。


永田にそう言われ、想像以上に体が強張っていたことに気付く。


あれから成長した。文化祭で聴きたいと思ってくれる人がいる。
緊張し過ぎて失敗するのが一番良くないな。


来年、思い切り楽しんでみろ。いつも以上に盛り上がるぞ。



ベースとドラムはぴったりと合っている。照先と守築はちょっとしたことで口喧嘩になるが、この時だけは協力できる。


鈴城は中学生には難しいと言われた部分もやり切った。
基本的に笑わない鈴城だが、今はきっと得意気に笑っているだろう。


ボリュームを上げると外れがちだった永田は、この一年でかなり安定するようになった。
盛り上がる体育館の中でも、かき消されずに歌声が響く。


この辺……そう、間奏はギターが重要になってくる。緋梅、頼んだよ。
楽譜を指差し、確かめていた。


すぅっと息を吸ってから、永田が期待するような視線を送る。


爪弾くこと、響かせること、重なること……全てが快感になる。
失敗したら、という不安はなかった。練習してしっかり覚えたんだ。後は楽しむだけだ。


この時頭の中でもやが晴れ、目覚めたようだった。


拍手や歓声が聞こえてくる。
こんなに楽しかったんだな。