週明けの月曜日、蔵王より先に部室に集まっていた。


「ちはー、お前ら練習は?何の用意もしてないじゃないか……」


「その前に大事な話があるんだ」


永田は袋に入った証拠品を見せる。


「学校で起きている盗難事件の犯人は、蔵王さんですよね?」


「は?」


無実だから、当然そういう反応になる。


「ちょっと待て!どういうことだ!?」


「部員やファンから金になりそうな物を盗んで、売っていたってな。最低だな……」


照先が冷ややかな目で蔵王さんを見た。


「爽ちゃん、財布盗まれて泣いてたんだぞ!」


「すぐ人の物返せって言うくせに、自分は全く返す気ないじゃん……」


守築と鈴城が追い打ちをかける。


「蔵王さんは、要らなくなったソフトや、財布の中にあった守築の写真、部員の持ち物を売っていた」


「売れるはずが無いだろう!ほぼ学校内でしか活動していないバンドの持ち物なんか誰が買う!言ってることが滅茶苦茶だぞ!」


「そうでもないんですよね。例えばバンド名が入ったオリジナルのピック。しかもこれを持っているのは一人だけ。欲しいと言うファンはいるんですよ」


「まさか……緋梅!?」


僕の番が来た。蔵王さんはすがるような目で見ている。


「僕のピックも盗まれました。蔵王さんがこんなことをするなんて、思いたくなかったです……」


こんなのは嘘だ。
蔵王さんの瞳から光が消えた。


「蔵王さん、もうここから出ていってください」


僕は退部届けを差し出した。
蔵王さんは崩れ落ち、表情が見えなかった。


「そういうことだ。退部するなら僕たちの間だけに留めておく。そうしないなら……先生に報告するしかないですね」


「永田……!」


「先輩の志望校、倍率高いんですよね?盗難で内申に傷がつくのはヤバイんじゃないですか?」


「照先!お前が謀ったんだろう!無実を証明すれば……!」


「人のせいにしないでくださいよー。緋梅のピックを盗むのは、蔵王さんにしかできないんですよ。無実の証明?こっちには証人も証拠も揃ってますよ?出来なかったらどうするんですか?」


照先は蔵王さんを見下し、ケラケラ笑う。


「……許さないからな。照先、お前だけは絶対に許さない……!」


退部届けを握りしめ、蔵王さんは部室から出ていった。