文化祭の発表は好評を博し、部室に来る人も現れた。
聴く人がいるというのは、恥ずかしいけど嬉しい。まあ僕なんかおまけのような存在だが。


部活が終わり、教室を出ると一人の生徒に呼び止められた。


「あのっ……先輩、かっこよかったです!来年、この部に入りたいです!そのときはよろしくお願いします!」


そうか、今日は小学生がここを見に来る日だったな。
顔を真っ赤にしていた後輩の男子は、とうとう走り去った。


「ありがとうー!」


勇気を出して言ってくれたんだ。僕もこのくらいは返したい。


あの子も、僕みたいに親に買ってもらうのか。
重さに驚きながらも慣れようとしたり、想像している曲と、ぎこちない指の動きを比べて落胆するのだろうか。
懐かしいな……。


「緋梅、新入部員を確保してくれたなっ!」


「うわっ!」


「永田、手加減しろ!緋梅の肩壊れるぞ」


後ろには頭をかく永田と、やれやれと肩を竦める照先、そして蔵王さんがいた。


「よかったな」


蔵王さんはそう言って、優しく微笑んだ。


僕は少し遅れて始まった。