「メレンダー!今日の体育は上着を着た方が良いんやってー」


「えっ、どうしたの?寒いの?」


「ドッジボールだから、腕とか当たるかもしれんやろ。強いの当たった時ちょっとましになるかもって」


「そっか。じゃあ着ていこー」


メレンダは更衣室に引き返そうとする。
嘘だ。


「メレンダ、今日ドッジじゃないよ」


僕はこれで面白がったりは出来なかった。
本当に引き返したらかわいそうだ。引き止めて、本当のことを教えた。


「そうなの?やだー、もう、無駄に歩くとこだったー」


メレンダは怒ることもなく、笑って振り向く。


メレンダは素直で、騙されやすかった。何をしても怒らず、笑って許すことが何度も騙そうとする原因になっている。


注意した方がいいかな?
でも、真面目にやめてと言ったらつまらないやつだと思われる。
冗談のわからないやつだとか、冷たい目で見られる。僕だってそれは嫌だ。


止めることはできない。けど、本当のことを教えることは出来る。


出来る限りのことをしよう。
僕は今日から、メレンダを気にすることにした。