いつもより早く電車に乗れたおかげか今日は席に座れた。

「あ、高野。おはよう、それパン?」

2度目だ、彼に突然声をかけられるのは。

「おはよう、ドーナツだよ昼食べるやつ。」

昨日の電話中に梶田が食べていたドーナツがコンビニで目につき思わず買ってしまった。

「昼にドーナツ?変わってんな。」

ドーナツはイチゴ味とプレーンの2つ。

「昨日梶田が食べてたの思い出したから、気になったの。」

プレーンかチョコか迷ったがチョコは少し高かったので我慢した。

「あー、その後寝ちゃって、朝起きたら一つだけ机の上に放置されてたドーナツ残ってたからご飯の代わりに食べた。お腹壊しそうだよな。」

彼は真面目だけれど少し大雑把らしい。

「夏じゃないから大丈夫じゃない?心配だけど」

確かに彼の鞄からお菓子のゴミが出てきている光景は何度か見た。

「高野は?朝何食べた?」

「オムレツとパンだよ。」

「オムレツか~、オムライスは好きだけどオムレツ食べたことない気がする。」

ふと今朝オムレツを切りそうになったことを思い出した。

「え、ないの?美味しいよ、ヨーグルト入れるのオススメ。」

彼がオムライスが好き、という情報を手に入れた。

「今度作ってもらおうかな…」

「へぇ、お母さん料理上手なの?」

「全然、高野みたいなお母さん欲しい。」

彼の普段の食生活がとても気になる。

「ドーナツ作れってうるさそうだから嫌だ。」

ドーナツばかり食べてそうなイメージ。

「俺だってちゃんとした栄養のある料理を求める。」

糖分だけで生きていけそう。

「栄養のある食事とドーナツ、でしょ?」

冗談まじりの会話をしてると学校の最寄り駅についた。

体感時間がとても短い。

普段はもっと長く感じるのに。

そういえば、彼とは連絡先の交換は前々からしていたがあまり話したことがない。



私は彼の背中を見ながら電車を降りた。