そうだ、彼に今日のお礼をしなければ…。

『今暇?』

送ってすぐに既読がついた。

『通話なら、今課題してるから』

電車の時もそうだが、彼はかなり真面目な性格のようだ。


私は受話器ボタンを押した。

彼はすぐに電話に出た。

「もしもし?梶田?」

「うん、梶田だよ。それでなんか用事?」

彼は何か食べているようなモゴモゴとした喋り方だった。

「今日のお礼というか…何か食べてるの?」

ごくん、と喉を通る音が聞こえた。

「うん、ドーナツ食べてる。てかお礼?あの微妙な味の飴の?律儀だな。」

頭を働かせた時は糖分が良い、という言いつけなのか、それとも彼がただ単に甘党なのか。

「いや、飴だけじゃなくて色々と…慰めてくれた気がしたから…」

多分彼は甘党なのかもしれない。
飴玉をポケットに仕込んでいるくらいなのだから。

「慰めたっけ?俺、特に何も言ってない気がするけど。」

話す途中で器用にドーナツを食べる、彼は甘党で確定だ。

「確かに…、じゃあ飴玉くれてありがとうって律儀なお礼をするね。」

彼の笑い声が聞こえた。
私の律儀なお礼が気に入ったらしい、むせる様な声もする。

「ドーナツ変なところに入った…」

と、苦しそうに言いながら彼は通話を切った。