流石に夕方なだけあって電車は混んでいた。

窮屈ではあったけど座ろうと思えば座れた。

席は空いていたのに座らなかったのは友達の雪と友達と喧嘩したことで、自分の価値に自信が持てなくなったから。

「……。」

彼は、電車の中では一言も喋らなかった。

彼は私が思っているより真面目な性格だった。



「それでね、智美がくれたキーホルダー失くしちゃった…。ごめん。」

「良いよ、次はお揃いの買いに行こう!」

近くの私立高校の制服を着た女子高生たちの会話が聞こえて私はついさっき喧嘩したばかりの自分と比較してしまった。

「はぁ…。」

溜め息をつく私を黙って見ていた彼は、何故かレモン味の飴玉をポケットから出して私にくれた。

「ありがとう。」

「あんまり美味しくないけど。」

飴玉を口にいれた時の絶妙な味は確かに美味しいとは言えなかったが、ジワーっと私の涙腺を緩くした。

また泣き出す私に彼は驚いていた。


「バイバイ。ありがとう。」

私は最寄り駅についたので彼にお礼を言って電車を降りた。