「もういい、瑠依には分からないから。」


私はもともと、国語は得意なのに人の感情は読み取れない。

いつも読み違えてしまう。

そもそも、授業でやるような内容が私の身の回りで起こるはずがない。

「ごめん、雪ちゃん。でもちゃんと言ってくれないと分からないよ。」

「だからもういいって。瑠依と話してると疲れる。」




あの後、雪ちゃんからの言葉に何も返せず下校。

いつもは雪ちゃんと寄り道しながら帰った道もすっかり知らない景色になった。

自然と涙が目に滲む。

「高野?なんで泣いてんの?」

予期せず声をかけられ涙は引っ込み代わりに悲鳴が出てきた。

「なんで急に声かけるの、心臓止まるかと思った。」

「ごめんごめん。」

多分謝る気は無いんだろう。

それでも泣いてた理由を深く迫ってこないのが憎めない。

「高野、家何処だっけ。」

彼は私の気を逸らそうとしているみたいだった。

「小田町」

確かに彼は泣いてるクラスメイトを流すような性格ではない。

「じゃあ電車通学か、途中まで一緒。」

でも、善人だと思ったこともない。
彼は不思議な人だ。

眼鏡をかけているが真面目な性格でも優等生的な成績でもない。

驚くほど眼鏡が似合わない人物だった。

「梶田はどこで降りるの?」

眼鏡をかけている理由は勉強のし過ぎなどと言う訳では無いらしい。

「俺は蒲羽駅」

ゲームのし過ぎ、漫画の読みすぎでもなく理由はただ単に昔からだそうだ。