「奏美ちゃんは行かなくていいの?」

「はい…」

「せっかく海に来たのに?」

「なんかさっきので一気に冷めました」

「別に陽菜ちゃんは悪気があったわけじゃないと思うけど…」

「それはわかっているんです。陽菜じゃなくて自分に対してイラついているだけです」


陽菜が悪くないのはわかっている。
恥ずかしさを隠すために陽菜にあたっちゃっただけで……


「カナ」

「翔也、どうしたの?」


座っている私と目線を合わせるために、翔也はしゃがんでくれた。


「海の家に行かない?」

「え、遊ばないの?」

「だって、カナが元気ないから。俺は、カナと……」

「海の家に行くの? かき氷とかいろいろ美味しそうなものがあったよー」


本を読んでいた侑斗さんは、顔を上げて微笑んだ。


「行こう、カナ」


翔也は私の手を引っ張って立ち上がらせると、パーカーをふわっと肩にかけてくれた。


「これ着て。日焼けするのは嫌だろ?」

「うん。ありがとう」


少し大きめのパーカーを着て、翔也と2人でビーチを歩いた。