「お騒がせしました! ごめんね、幼馴染くん」


和希くんは柚希くんの腕を引っ張って足早に去って行った。

翔也は軽くため息をついて私を見る。


「弁当忘れて気づかないなんて、カナらしいけどさ。ちゃんと確認してから家出なよ。俺がこんなこと言う資格なんてないけど、学校ではあいつらと関わってほしくない」

「それは、私のことが大切だから?」


私の言葉に翔也は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにやさしく笑ってこう言った。


「そうだよ」


たった一言だけなのに、なぜか心に響いた。体があたたかくなって鼓動が少しだけ速くなった気がした。

そんな不思議な気持ちを隠すように慌てて口を開く。


「でもね、私だってもう高校生なんだよ? 自分のことくらい自分でできる。翔也が心配してくれるのはすごく嬉しいけど」


翔也はバツが悪そうな顔をして軽く頭を下げた。


「カナ、昨日はごめん。今日の朝も…」

「大丈夫! 私は別に怒ってないよ。それよりお腹すいた〜! 早くご飯食べよ」

「そうだな。ひぃは待ちくたびれて怒ってる…」

「カナ! 翔! 遅い!」

「これあげるから」


翔也が陽菜の前にイチゴミルクを置くと、「特別に許してあげるっ!」と笑顔になった。