去年の今頃は・・・なんて感傷に耽るひまもなく。会社も28日から年明け6日までの年末休業に入り、あっという間に大晦日を迎えていた。

大きな家具を残してるアパートの方は簡単に掃除を済ませ、愁一さんのお店もクリーニング業者を入れたり、行き届いてなかった場所を綺麗にしたり。もうすっかり私の家はここなんだと、くすぐったいような、しみじみしてしまうような。
 
お正月用のおせちは特に拘らないで普段より少し、お酒とおつまみになるものを買い足したぐらいだ。毎年どんな風に過ごしていたのかを訊ねたら。にっこり微笑まれた。

『誘われれば飲みに行ったりかな。これからはでも二人で寝正月だね』



 
定番の年末番組をBGMに、今夜はリビングテーブルにあれこれ居酒屋料理を並べて晩酌している。愁一さんはほろ酔い加減で私を構い倒しながら、どことなく不敵っぽくて満足げな笑みが途切れない。

テレビが年明けのカウントダウンを始めると、ほんのり気怠い私をぐっと抱き寄せ「寝かせないよ」と意地悪く微笑む。

テレビの向こうも大盛り上がりの瞬間。顎をクイと持ち上げられてキスが繋がった。そのままやんわりソファに仰向けに倒されて、彼の身体ごと重みを受け止める。頬を両手で掴まえられ、口の中が彼の舌でしなやかに征服されてく。どちらかと言えば容赦のないされ方。今から存分に奪い尽す予告・・・ううん宣告かしら。

愁一さんは私が苦し気に漏らす吐息を一切無視して好きなだけ貪り。アクセルを次第に緩めると、最後は優しく啄んでから離れた。

「・・・・・・睦月は僕のものだよ」

間近で私を見下ろす彼の表情はとても静かだった。

「君は自由だけどずっと僕に繋がれているからね。・・・必ず憶えておきなさい」

淡く笑んだように見えた。でもすぐに首筋に愁一さんの顔が埋まって、しっとり吸い付かれ。ルームウェアの中に潜り込んだ指が滑らかに素肌を滑り出す。
 
触れられればどこもかしこも反応するくらい、貴方に慣らされた躰。本当はもう愁一さん無しにはいられない。ちゃんと私は繋がれているから安心して。
 
鎖を解いてどこかに行ったりしないわ。でも言ってあげないの。意地悪じゃないの。すべてを与えあうことだけが愛じゃない。 

私と貴方は時々、答えを互いの胸の内に仕舞っておく。愛ゆえに。欠けている限り埋めることに貪欲になれる。愛し続けられる。




・・・そうでしょう?