「・・・0点。そんなんじゃ、全然話になんねーな」

溜め息雑じりに聴こえたかと思うと。むくりと上体を起こした大介さんに二の腕を掴まれて、勢いよく抱き起されあっけなく彼の中に閉じ込められていた。

「睦月の一番手が保科さんなのはよく分かったよ。俺を選べって言っても無理なんだろ。ならいい二番手のままで」

更に深い溜め息。驚いて私の涙線にはすっぽりと栓がはまったようだ。

「言っとくけどな。俺は寄り道してるつもりはさらさら無いし、好きな女を好きでいるだけだ。だいたいお前とだから結婚したいだけで、結婚相手が欲しい訳じゃない」

二番手のままでいい・・・って。耳を疑う。それから、いま彼が言った言葉を懸命に脳で咀嚼し始める。呆然と彼を見上げれば不機嫌そうに私を睨め付けてた。

「こんなので引き下がれるか。お前、俺が好きで別れたくないって泣いてんのと一緒だろ、バカ」 

「・・・・・・・・・・・・」

「隙があればいつでも保科さんから睦月を横取りする。本当に駄目だって納得したら観念して諦めるから。それまで大人しく付き合え」
 
茶化すことなく言い切った大介さんは、目を細めると顔を寄せてキスを一つ落とした。

「・・・返事は?」

離れた彼と深く目が合う。
 
解けかかった朱い糸がほつれて小指に引っかかって。断ち切ろうとしたはずなのにサンタクロースの悪戯なのか、意地悪なのか。
 
愁一さんの顔が浮かぶ。ああどうしてだろう。大介さんには怒られてしまうだろうけど。早く愛する貴方の腕に還りたい・・・・・・。

私は祈りを捧げるように目を瞑り。返事の代わりに自分から彼に口付けた。途端、彼の腕が躰に巻き付いて。そのまま仰向けにベッドに倒される。繋がったキスは次第に貪るように激しくなって火が点く。指が、舌が、私を好きに奏で始める。


大介さんの熱情を全身で受け止めながら。いつかは結局、彼を失う切なさが。痛んで私を心許なく苛むのを忘れなかった。