選んだ言葉に曖昧に隠した臆病を彼なら見抜く。そのまま暴いて否応なしに浚ってくれればいい。・・・頭を掠めた都合勝手な願い。

一瞬、視線を固まらせてから大介さんはすっと目を細めた。私の腰に回った腕に力が籠って。 

「・・・何をそんなに怖がってる?」

真顔で問われた。

「俺を好きなら好きでいいだろそれで。その後でお前が保科さんを選ぶなら俺は納得する」

淡々と言い切りながら眸の奥に宿る強い眼光。

「・・・けど同じ土俵に立たせてもない内から決めつけるなよ」

いつだって彼は真っ向から足許を掬いに来る、潔いほどに。惹かれずにはいられないほどに。

もう。足掻かずにこのまま掬われてしまおう。心が定まった。私に選択肢を与えようとしてくれる彼の優しさにつけ込んで。彼が望んだことだと卑怯な答えを出してしまえ。

胸の内で深く呼吸を逃し、大介さんの胸元に顔を寄せて預けた躰の力を抜いた。

「・・・・・・うん。そうね・・・」

私を抱き止めた彼は微かな安堵の気配を漏らし、苦笑いしたのが分かった。

「・・・久々に緊張してるな俺。客相手より睦月のほうがよっぽど手強い」

私のせい?上に不本意そうな視線を向けると、大介さんらしい余裕の笑みが浮かぶ。顔が近づいてキスが繋がった。噛みつかれて啄まれて絡みつかれて。離れた瞬間に腕を引っ張られてコートも着たままベッドに仰向けに倒された。

「大介さん、シャワー・・・っ」

自分は、脱いだジャケットを応接セットのイスの背に放り投げさっさと上半身だけ裸になる。

「いいよ睦月のなら綺麗だから」

彼がベッドに上がり今度は私がさくさく剥かれた。

「・・・お前の体ハンコだらけ」

毎日のように更新される愁一さんの標(しるし)。一晩、途切れたぐらいじゃ数も減らない。大介さんは全てを晒した私を下に、不敵そうに口角を上げた。

「なら俺のは別のところにしとくさ。睦月が絶対に忘れられなくなるように」