愁一さんが帰ったあと部屋の掃除と洗濯に取り掛かった。水回りが面倒だけど、他は掃除機とホコリ取りのモップで済む。汚す人間がいないのと物が少ないのはこういうときは本当に助かる。

ひと段落してティーバッグの紅茶で休憩。テレビの前のコタツテーブルにマグカップを置き、座椅子にすとんと身体を沈ませる。

「・・・お布団が干せないっていうのがね」

ぼそっと独り言。きっと愁一さんのペースで行くと休みの前は泊りになる。私にも家事があるって理解があるからこうして帰してくれるけど、午前中が潰れるのは確実。さすがに午後から干しても意味がないし、布団乾燥機だけに頼るのもどうかと思うし。

そんな地味なことに悩んでいたらスマホにラインの通知。開けば羽鳥さんからだった。

“予定通り7時に迎えに行くけど大丈夫?”

・・・マメね、このひと。というよりは仕事柄もあるんだろう。不動産売買は金額も大きいから、お客さんが気持ちを変えてしまう場合も少なくない。細かく連絡を入れて確認するのが習性みたいなものだから。 

大丈夫です、と余計なことは書かずに短く返す。変に期待されても。そんな予防線を張ったのを彼は見抜くだろうか。

愁一さんは何も云わなかった。・・・でもあれは本心じゃない。あの笑みには温度を感じなかった。試されてる・・・たぶん。

知らず溜息が漏れた。羽鳥さんが悪いひとなら良かったのに。