気怠さの中でぼんやりと目を醒ました。薄明るい室内、板目の天井。見慣れない色のカーテンの隙間から洩れる光。自分の部屋じゃないけれど。・・・朝だ。

羽布団の柔らかな重みと、自分に巻きついてる腕の重み。夢じゃないと分かってる。そっと隣りを窺う。こっちに向いて静かな寝息を立てる保科さんの顔がすぐ傍にあった。

躰の奥の、見えないところに残ってる鈍い痛み。感じやすいところをずい分責められたから。裏腹に素肌が敏感になってる気もする。

このひとに抱かれたんだ・・・・・・。どこかやっぱり現実味が薄い。目を閉じた顔もとても整っていて。前髪が額に落ちてると若く見える。・・・なんて失礼かしら。じっと見つめていたら彼が小さく身じろいだ。微睡みから醒めたのか細く目を開ける。

「・・・・・・おはよう」

「・・・おはようございます」

笑んで返すと、ぐっと躰ごと引き寄せられた。彼の胸元に顔を押し付ける格好で腕の中に閉じ込められてる。

「良かった・・・」

頭の上で保科さんのやんわりした声がした。
 
「・・・ちゃんと居てくれたね」

天辺にキスが落とされた感触。
彼がどうしてそう思ったのか私には計れないけれど、安心してもらおうと当たり障りのない返事を返す。

「大丈夫です。・・・逃げたりはしませんから」

「うん・・・ありがとう・・・」

お礼を言われるのは良く判らないにしても。保科さんが満足そうだったから。温かな彼の体温に包まれて髪を撫でられている内にまた。いつしか眠りに落ちてしまったのだった。