さっきまでそこにいた黒い獣は、跡形もなく消えている



まるで何事もなかったように、辺りは静かだった



「あの、大丈夫ですか?」



その場から動かないドレスの人の所に近寄ると、すっかり青白くなった顔でふっと微笑んだ



ドキッと胸が波打つ
美人の笑顔は心臓に悪い



「よかった…
あなたが、無事、で…」



グラッ



今度は急に力が抜けたように後ろに倒れかける



危ない!

そう思った時、フワッとさっきまではしなかった香りが鼻を掠めた