私、今日からお金持ち目指します?

「おぉ」とか「キャー」とか、またしても響めきが起こる。
隣に座る日下部さんは、「このぉー、このぉー、」と肘で私を小突く。

僕のモノ……いかん、目眩がしてきた。

「というわけで、セミナーを続ける気が無くなった方は、お申し出下さい。先ほどと同様に返金させて頂きます」

二十人ほどが立ち上がり、部屋を出て行く……が、意外だったのが怜華嬢と美麗嬢だ。残っている。

上条勝利が会場を見渡し、「三十二人。当初の予想通りでした」と言う。

「大幅に人数が減ったので、次週から隣の一号会議室に部屋を移します。お間違いなく」

……ということは、この展開を予測して、既に予約済み? 用意周到だ。

「さて、このように、人は興味を失ったモノから去っていきます。それを無理やり引き止めようとする人もいるでしょう。ですが、それこそ時間の無駄遣いです。お互いにとって」

「ですが、客を逃したのですから、木佐社長も上条さんも大損ではありませんか?」

巴女史が訊ねる。

「確かに。でも、それはひと時のことです。長い目で見れば、お互いのため、強いては僕のためです」

どうしてそう言い切るのだろう。逃がした魚は大きい、と思うのが普通なのでは?