私、今日からお金持ち目指します?

「芦屋君、僕は別に、恋の駆け引きを伝授しているわけではないよ」
「でも、十分使えます!」

どこで使うのだ!

それにしても……十代の特権だろうか? おそらく彼の言葉が指すのはナンパ。そういう思いが見え隠れしているのに、全然イヤラシく見えない。

「本当に百戦錬磨っぽいね」

山本さんがクスクス笑う。

「彼、天使な小悪魔みたい。あっ、でも、もしかしたら、全部フリかも。実は一途な清純男子で童貞だったりして」

日下部さん……乙女のような貴女の口から『童貞』などという言葉が出るとは、私はそちらの方が驚きです。

「……だから勝利様は、私たちに諦めろとおっしゃるの!」
「そうです。振り向かない相手を思い続けることほど……無駄な時間はない」

「でも」と怜華嬢が反論する。

「勝利様が絶対に振り向かないとは限らないわ! だって……」と彼女の視線が私を見る。

「下条さんより私の方が全てにおいて勝っているもの!」

嫌味なくらい自信満々な態度。そんなこと、言われなくても分かっている。でも、何も皆の前で、さらけ出さなくても……ズンと落ち込む。

「そうかもしれませんね」

上条勝利も同意する。

「ですが」と彼がゆっくりと私の席に近付く。