「今の話を聞いて、自分の意に添わない、それなら富豪などなりたくない、と思った者は挙手して欲しい」

会場がざわめく。

「なぜなら、その人たちの『富豪への道』はここで途切れるからだ。故に、続けて受講しても意味を成さない。だから全額返金する」

「ということは、次回から来なくてイイということですか?」

芦屋君が声を上げる。

「そういうことだ。では、どうぞ」

見渡せば、半数ほどの人が手を上げていた。
これって、主催者側からいえば大損じゃない?

木佐社長が可哀想、と思っていると、ドアが開き、当の本人が現れる。

「挙手している者たちに、早急に返金してくれたまえ」

「了解」と驚いた様子もなく木佐社長が返事をする。その手に携帯端末が握られている。

もしかしたら、今までの会話を聞いていた?
なら、この展開は最初から計画されていたもの?

呆気にとられているうちに、挙手していた人たちが会場から去る。

「では、続けよう」

何事もなかったかのように上条勝利が話し始める。