私、今日からお金持ち目指します?

到着したのは十時十分。遅刻だ。

なるべく目立たないように、コソッと後ろのドアから中に入る。まるで学生に戻ったみたいだ。否、学生の時でさえ、こんなことはしたことがない。

幸いにも、一番後ろのドア側の席が空いていたので腰を下ろし、ホッと胸を撫で下ろす……が、そうは問屋が卸さなかった。

「……と、今の件然り、時は金なりと言うのは本当だ。時間を無駄に使ったり、時間にルーズな者は富豪にはなれない! 分かったかな、下条冬夏さん」

ヘッ? と前を向くと彼の摂氏零度の眼が私をジロッと睨んでいた。

「なぜ遅刻したのだ、という馬鹿な質問はしない。遅刻は遅刻だ。言い訳など聞きたくもない」

私も別に話そうと思わない。貴方のお母様のお陰で遅刻したのです、などと恩着せがましい言い訳など。

そうだ、彼が言う通り、遅刻をしたのは私だ。ここは素直に謝っておこうと、「すみませんでした」と頭を垂れる。

「潔いのイイが、君にはプライドというものはないのか?」

はぁ? いったいどうすれば良いというのだ!

「言い訳は無用とおっしゃったではありませんか」
「言った。だが、君に正当な理由があるのなら、言った方が君の利になる」

全く訳が分からない。