「主人が煩いの。一人で外出するなって。私、自宅の乗り物しか受け付けないみたいで、すぐに酔っちゃうから」

ご主人でなくても、アレでは私でも止める。

「でも、助けて頂いた方が冬夏ちゃんだったなんて……やっぱり、私たち、ご縁があるのね」

ある意味そうだろう。でも……。

「やっぱりお嫁ちゃんになる方だわ」

嫁にはならぬ!
つくづく母のご学友だ。似たもの同士だ。

「あのぉ、お加減はいかがですか? もう大丈夫そうなら、私は次の電車で行こうと思うのですが……」

かなり時間は食ったが、まだ余裕だ。上条勝利に一言もの申さねば、腹の虫が治まらない。

「ええ、大丈夫よ」と言いながら皐月さんが立ち上がる。が、フラッとよろける。大丈夫じゃないじゃないか!

「まだダメそうですね。お家からお迎えに来てもらいましょう!」

私の提案に流石の皐月さんも頷き、私に携帯端末を渡す。

「ごめんなさい。今、文字を見ると気分が悪くなるの。着信履歴から『狭間(はざま)』を出して電話をかけて頂ける。執事なの」

執事……そんな単語、リアルに聞いたのは初めてだ。萌える。
ちょうど昨夜読んだ漫画を思い出し、ニヤけながら画面をタップする。